混沌

最近は何重にも折り重なったカオスの中で過ごしている。

少し前まではもっとシンプルに暮らしていたし、考える事は一つで良かった。それが、今は多層構造の中をゆらゆらと揺れている様な感じである。

あれだ、うしおととらでみんながうしおの事を忘れてしまった時の様な、魔女の宅急便でジジの言葉がわからなくなった様な喪失感というか。僕はあの感じが凄く淋しくてイヤだったんだけど、今はあれのおかげでこの感覚をより把握しやすくなっているように思う。

沼田まほかるという、鬱な物語を書く作家がいるのだけれど、女性に人気があるという。僕は前に好きだった女の子がこの人の本を読んでいたので自分も買って読んでみたのだけれど、かなり激しく心を揺さぶられた。

そのときに思ったのが、男は憂鬱なときには勇気が出る様なものを好むという事。つまり、今ある状況と逆のエネルギーを得て、状況を乗り越えようとするという事である。

女性はそうではなく、憂鬱なときには同じように憂鬱なものを心に取り入れ、今の状況との共通点を探し、そこに共感して、状況を乗り越えようとする。そんな事を思った。女心が分かっている自信は無いので間違っているかもしれないけど。

今、憂鬱というわけではないのだけれど、色々と複雑なものが自分の近くにある。そして、何か思いっきり憂鬱な作品でも見たいなぁなんて気分である。

そして、いい感じにSNSへの飽きが来ている。SNSは良くも悪くも「簡単」である。表現する事も、解釈する事も、簡単に行える。

自分は「簡単」に流れていたと思う。そんな簡単じゃないって、心では分かっているのだけど、簡単な方法に慣れてしまっていた。

”世の中のことテレビでざっと見て、分かった気になったって…そんなのウソだぜ！！
世の中、誰も気づかないほんの小さな場所にだって色々な人の思いや…知恵や…失敗ややり直しが詰まってるんだ！！世界は目で見えてる大きさの百倍も、千倍も広いんだぜ！！それに比べりゃ恐い夢も見えない鎖もハデな超能力も小せえよ！！ごくごく一部だよ！！” (七夕の国 著: 岩明均)